木造住宅 低コスト 耐震補強の手引き[2022年度 図表携帯版]【PDF】NEW
あいち・なごや耐震化シンポジウム〜耐震改修ってどうやるの？〜を開催しました！NEW
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- ◆主催
- 愛知建築地震災害軽減システム研究協議会
（県内国立大学法人3大学、愛知県、名古屋市、建築関連団体等で構成） - ◆結果
- 木造住宅補強技術コンペには58提案の応募があった。応募提案について、コスト、耐震性能、施工性、実現性、居住性等を審査項目として12月27日開催の審査委員会において審査をおこない、最優秀賞2、優秀賞3、佳作5、アイデア賞3の提案を選出した。
※最優秀賞・優秀賞は、タイトルをクリックすると詳細が表示されます。【最優秀賞】 間伐材を用いた耐震補強リブフレーム TEAMj.POD（（株）ログウェル日本、京大） 住宅用透過型耐力壁“ひかりかべ” 旭硝子（株）、岐阜県立森林文化アカデミー 【優秀賞】 SDU工法（SDU-W） イーメタル（株） GHハイブリッド制震工法 江戸川木材工業（株）、（株）日立製作所 木造軸組住宅用壁補強キット「NEWかべつよし」 エイム（株） 【佳作】 耐震ポールによる木造住宅の外部耐震補強工法 （株）シーク建築研究所 アルミニウム合金製木造住宅用耐震枠 （社）カーテンウォール・防火開口部協会
アルミニウム建築構造協議会木造軸組補強工法「荒壁パネル」 荒壁パネルグループ（丸浩工業、上地木材） 透過性を付与した耐力壁による補強工法 首都大学東京21世紀COEプログラム
E-51プロジェクトチームJ−耐震開口フレーム ジェイ建築システム（株） 【アイデア賞】 合板による柱間補強法 河村 典久 耐震戸・扉 中部大学工学部建築学科片岡研究室
伊藤平左ェ門建築事務所制震金具パワーガードによる木造住宅耐震改修工法 （株）サカエ - （同一の賞については順不同）
- ◆コンペの概要
- 募集内容：既存木造住宅の耐震性能向上を目的とした耐震補強技術・工法
- 募集期間：平成17年8月15日から平成17年11月30日
- 応募資格：個人、法人、団体の別や資格の有無は問わない
- 表彰：
最優秀賞 賞状及び副賞10万円
優秀賞 賞状及び副賞5万円
佳作、アイデア賞 賞状
- ◆応募技術・工法の取り扱い
- 応募された技術・工法のうち、今後各提案者から耐震補強効果に関する確認資料の提示を受け、その効果が定量的に確認できるものについては、愛知建築地震災害軽減システム研究協議会から県に「民間木造住宅耐震改修費補助事業」の対象として取り扱うよう推薦することとします。
なお、この推薦を受け県は「民間木造住宅耐震改修費補助事業」の対象として取り扱うことを検討する予定です。
あいち木造住宅耐震改修事例コンペ審査報告
- １ 審査経過
- あいち木造住宅耐震補強技術コンペに関する応募総数は58提案であった。
審査は12月27日開催の審査委員会（委員長小野徹郎以下12名、内1名欠席））で慎重審議した。
審査委員会に先立ち各審査員が提出資料による事前審査（1次審査）を行い、審査員が一堂に会した審査委員会でその結果を集計した上で2次審査を行った。 審査項目はコスト、耐震性能、施工性、実現性、居住性等として、1次審査結果を基本としてまず58提案から35提案を抽出した。 抽出された各応募提案についてさらに全員で合議審査を進め、優秀候補として23提案に絞り、別途アイデア賞候補として6提案を抽出した。 さらに審査を進めて10提案を優秀候補として選定した。
次にその中から、最優秀候補、優秀候補、佳作候補の選定を行った。 最優秀候補については間伐材を用いた耐震補強リブフレームと住宅用透過型耐力壁“ひかりかべ”が高い評価を受け、検討を重ねたが甲乙付けがたく、2提案を最優秀とすることとした。 次いで優秀候補の絞り込みを行い、その結果3提案を優秀とすることとし、5提案を佳作として選定した。 またアイデア賞として3提案を選定した。
審査結果は以下の通りである。 - ２ 各選考提案の講評
※最優秀賞・優秀賞は、タイトルをクリックすると詳細が表示されます。 - 【最優秀】
- 工法名称 間伐材を用いた耐震補強リブフレーム
- 本耐震補強工法は、板状の製材と鋼板を用いて製作した□型の剛節フレームを既存建物の架構内に組み込むことにより、架構の水平耐力を増大させ、地震による被害の低減を図るものである。
リブフレームは工場製作を原則としており製作精度が良好であり、現場への搬送も4トン車で行える。
現場ではラグスクリューまたは通しボルトで既存の架構と一体化するため、極めて施工性に優れている。
リブフレームは仕口部分の間に鋼板（薄板）を挟み、釘留めをしているため、一体性に優れ、安定した高フレーム耐力が期待できる。 さらに、国産スギなどの間伐材を用いている点で地場林産業の育成への貢献も期待できる。 改修工事費も木造2階建て、延床30坪程度の住宅で80万円程度である。
以上を総合すると、本耐震工法は、アイデア、耐震性能、施工性、コスト、実現性の何れの点においても優れていると判断でき、最優秀賞にふさわしい工法である。 - 工法名称 住宅用透過型耐力壁“ひかりかべ”
- 住宅向けの透光型耐力壁であり、面格子状のFRP（繊維強化プラスチック）製の壁体を耐力壁として利用している。
せん断試験により壁倍率2.5の性能を有していることを確認し、国土交通大臣の建築基準法における壁倍率の認定も取得している。
採光や通風が可能であるため、開放的な住空間を確保しながら耐震性を向上させることができる点に特徴があり、従来、意匠・用途面から耐震補強を躊躇していた住民にとっては魅力的な工法である。
完成度は高いが、コスト的に割高な点が課題として残り、今後、ローコスト化されることが望まれる。 - 【優秀】
- 工法名称 SDU工法（SDU-W）
- 鋼材の高い靱性と粘弾性体のエネルギー吸収能力を併せ持った耐震効果の高い補強方法であることが評価され優秀賞とした。
限られた壁面に耐震効果が要求される補強では、4.2倍という壁倍率は有効である。 今後は、高い壁倍率を有効に発揮させるための基礎との結合方法や、仕上げ復旧を必要としない低コスト化を実現し、耐震部材だけではなく耐震工法システムとして商品化していくことが望まれる。 - 提案工法 GHハイブリッド制震工法
- 当工法は、オイルダンパーを建物に装着しここでのエネルギー吸収により建物の変形を抑える事を狙う。
近年鉄骨造高層ビルに多用される概念である。 設置タイプとして外壁型、内壁型、仕口型があり、適材適所の設置が可能である。
耐震性能は、時刻歴応答解析、実大実験などにより詳しく検証されており、建物の層間変形を60分の1以内に抑えるようにしている。 各部材はユニット化されており、施工は容易である。 設計・施工・維持に対する仕様書も整備され信頼できるとともに、工事の品質管理も充分な体制がとられている。 居住性も問題なく、費用も手頃で施工実績も多いことが評価され優秀賞とした。 - 提案工法 木造軸組住宅用壁補強キット「NEWかべつよし」
- 木質系ボードを使って非耐力壁を簡単に耐力壁にするという工法である。
天井、床の加工をせずに壁量を増やすことができ優秀賞とした。
壁補強と同時に柱脚部もホールダウン金物で補強すれば、壁の強度が十分に発揮できると期待される。
特殊な工具や技術が一切不要であり、施工は容易である。 きわめて確実でオーソドックスな工法である。 施工箇所の内壁を解体して柱をあらわす必要がある点が多少の難点といえるかもしれない。 - 【佳作】
- 提案工法 耐震ポールによる木造住宅の外部耐震補強工法
- 住宅の外周部に、地中深く埋め込んだ金属製の角ポールを建て、二階レベルで建物と緊結して、地震時に水平力と建物転倒に抵抗させる工法である。
建物外周部の狭い空間を利用して補強でき、工事中も補強後も建物の機能を大きく阻害しないこと、必要なところに必要な本数だけ補強できることが評価できる。
また、工法に対して詳細な検討がなされていると共に、設計者が一貫して設計・施工に関与する体制を整えていることが評価される。
しかし美観的な工夫、頂部取合部の工夫及び基礎部の工法の工夫による工費削減のさらなる検討が望まれる。 - 提案工法 アルミニウム合金製木造住宅用耐震枠
- 外壁の外にアルミニウム合金性の耐震枠を設けて、従来、耐震補強の対象としていない開口部での補強を考えたものである。
耐震枠を外部に設置するため、プライバシーを保ちながら人力で施工でき、開口部も減少させず、断熱サッシ等を取り付けることにより省エネにも活用できる。
壁の補強と併用すれば、開口部が大きな住宅には有効な方法である。 ただし、下枠を地中梁としてコンクリートに埋込み固定する必要があり、現場の状況によっては若干高コストとなることから一層の費用の低減が望まれる。 - 提案工法 木造軸組補強工法「荒壁パネル」
- 本工法は、一般的な木材の壁下地そのものを耐震要素となるよう、納まりを工夫するとともに、又それに取り付くパネルは土と古新聞紙等を混ぜ合わせ成型したものを用い、下地とパネルが一体となって耐震性のある壁を構成するもので、伝統的な土壁下地（荒壁）に近いものとなっている。
一般的な工法ではあるが、耐震性能を評価できるように施工上の工夫をしていることと、使用する材料が、間伐材、土、古紙等で、資源の有効活用やリサイクル等にも配慮がなされている点が評価された。 和風の仕上げを望む人には受け入れられるのではないかと思われる。 - 提案工法 透過性を付与した耐力壁による補強工法
- 当工法は、①木格子とアクリルを組み合せる壁、②エキスパンドメタルによる壁、の提案で採光、通風などの透過性を持つ事に特徴がある。
可視部への採用を主眼とし、間仕切り的壁や今ある引き違い建具の片側をフィックスにして壁を造る。
木格子は和風建築のデザインを展開させる。
耐震性能は、実験により壁倍率で①：2倍、②：4倍程度を確認している。 既存周囲部材への取り付けも仕様が比較的細かく決定されており、即実施可能で居住性、美観への配慮もある。 壁は工場製作したものを搬入し精度はよい。費用も適切である。 - 提案工法 J−耐震開口フレーム
- 開口部又はオープンな部分を、フレーム等によって耐力壁と同等な強度を確保し、耐震性能をアップさせる案は、他の応募作品にも見られるが、木質系の材料で考案されている点がこの作品の特徴と考えられる。 その結果開口部等が約300〜480ミリメートルの幅が縮小されるので狭小な部位には利用しにくいことから佳作となった。
- 【アイデア賞】
- 提案工法 合板による柱間補強法
- 低コストで効果的な耐震補強技術を募集するという本コンペの主旨に沿った極めて簡便かつ低コストの補強方法である点を評価し、アイデア賞とした。
施工対象は真壁に限られるが、壁面から合板がはずれない限り補強効果は期待できる。 今後は、柱脚の引き抜き力に対する補強、あるいは既存の柱梁との一体化方法と合体させ、低コストな補強方法として実用段階まで発展させていくことが望まれる。 - 提案工法 耐震戸・扉
- 耐震壁を増やすことは、耐震性向上のための確実な方法のひとつであるが、そのために空間が閉鎖的になったり動線が限定され使い勝手が悪くなったりするためなかなか採用されない方法でもある。
さらに、内装工事が関係してくるため大改修を覚悟しないとできないというハードルもある。
本提案は、もともと開口部と見なされる戸・扉を耐震壁として活用しようとする提案であり、耐震壁による補強の際の問題点を大幅に解決できる工法であると考えられる。 耐震戸・扉の耐震性能を発揮させるための細部や維持管理についての検討もされており、アイデア賞に適うものである。 - 提案工法 制震金具パワーガードによる木造住宅耐震改修工法
- 摩擦型制震装置を木造の柱、梁などの仕口部分に設置し、層間変形角の変化に伴う回転により、制震装置内の摩擦パッドおよび板バネが変形し、減衰性能を発揮することで建築物の倒壊を防ぐものある。
本制震装置は小型で柱、梁に取り付けやすく、施工性に優れている。 また、制震装置には過度の変形やねじれを防止するためのアーチ型板バネを取り付けるという工夫がなされている。
極端な壁量不足の場合には耐力壁補強との併用が必要であるが、耐震補強工法のアイデアとしては斬新なものである。