愛知建築地震災害軽減システム研究協議会

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◆主催

愛知建築地震災害軽減システム研究協議会
（県内国立大学法人3大学、愛知県、名古屋市、建築関連団体等で構成）

◆結果

あいち木造住宅耐震改修事例コンペには17事例の応募があった。
応募事例について、耐震性能、施工性、居住性、コスト等を審査項目として12月25日開催の審査委員会において審査をおこない、最優秀賞1、優秀賞2、アイデア賞1、佳作1の事例を選出した。
※タイトルをクリックすると詳細が表示されます。

【最優秀賞】
ターンバックル式平板ブレースによる工法　（ボルイン・X耐震工法）	有限会社インサイド・システム
【優秀賞】
仕口ダンパーとあら壁パネルの利用、基礎の添え打ち	ウズラボ一級建築士事務所
透過性を付与した耐力壁による補強工法	首都大学東京21世紀COEプログラムE-51プロジェクトチーム
【アイデア賞】
外挿補強フレーム工法	有限会社伊藤平左ェ門建築事務所中部大学工学部建築学科片岡靖夫研究室
【佳作】
オイルダンパと接続特殊パネルによる工法（GHハイブリッド制震工法）	江戸川木材工業株式会社株式会社日立製作所

（同一の賞については順不同）

◆コンペの概要

募集内容：既存木造住宅の耐震性能向上を目的とした耐震改修事例
募集期間：平成18年9月26日から平成18年12月10日
応募資格：個人、法人、団体の別や資格の有無は問わない
表彰：
　最優秀賞　　　　　　　賞状及び副賞10万円
　優秀賞　　　　　　　　賞状及び副賞5万円
　アイデア賞、佳作　　賞状

あいち木造住宅耐震改修事例コンペ審査報告

１　審査経過

愛知建築地震災害軽減システム研究協議会は実効ある具体的な耐震補強技術の開発と地域への技術の普及に学官民一体となって取り組んでおり、活動の大きな柱として、地震による木造住宅の倒壊防止を目標に、比較的低コストで簡単な耐震改修補強技術、手法を普及させることを掲げている。その目的に沿って、昨年「あいち木造住宅耐震補強技術コンペ」を実施した。本年は具体的な耐震補強事例を対象に「あいち木造住宅耐震改修事例コンペ」を行い、変化に富んだ17事例の応募があった。
審査は平成18年12月25日に審査委員会(委員長：小野徹朗以下10名出席、2名欠席)を開催し慎重な審査を行った。
審査は、まず全応募資料を各審査委員が査読し、意見交換した。その後、委員全員で全ての応募事例について一点一点その特徴、評価できる点などの比較評価をしたうえで、投票を行い集計し、9事例を抽出した。
引き続き抽出された9事例について改修技術、改修費用、改修効果、デザイン性などについて突っ込んだ意見交換のうえ、最優秀候補、優秀候補、アイデア賞、の表彰する事例の選定を行った。
優秀候補として、仕口ダンパーとあら壁パネルの利用および基礎の添え打ちによる事例、ターンバックル式平板ブレースによる事例、透過性を付与した耐力壁による3補強事例が高い評価を受けた。
総合的な比較検討により、ターンバックル式平板ブレースによる築後約40年の長屋建て住宅の改修事例が、耐震改修により見違えるように生まれ変わらせた点が高く評価され、最優秀賞に最もふさわしいとされた。他の2事例についてはそれぞれ改修の特徴が明確で優秀賞とすることとした。
さらに、アイデアが優れた事例および佳作の事例について意見交換し、外挿補強フレーム、およびオイルダンパによる事例がそれぞれ選出された。

２　各選考提案の講評 ※タイトルをクリックすると詳細が表示されます。

【最優秀賞】: 工法の種類　ターンバックル式平板ブレースによる工法（ボルイン・X耐震工法）; 本提案は、築40年の老朽化した木造軸組工法の店舗併用長屋住宅を耐震補強した例であり、1階店舗部分を駐車場に転用し、ターンバックル式平板ブレースを用いて耐震補強を行っている。明らかに耐震性が劣って見える老朽長屋住宅を、耐震化するだけでなく、見違えるような内・外観に生まれ変わらせた点は、十二分に耐震化の魅力を伝えている。耐震化が遅々として進んでいない老朽木造共同住宅の耐震化の先鞭をつけるものであり、改修事例の最優秀にふさわしい案である。
【優秀賞】: 工法の種類　仕口ダンパーとあら壁パネルの利用、基礎の添え打ち; 住宅の耐震改修では、評点をアップさせるだけでなく、所有者の住まい方、改修費の使われ方などに対する十分な配慮が必要である。本事例では基本生活の部屋と予備的な部屋を分け、補強する部分を明確にするとともに、余剰部分をテラスに改修して豊かな空間を作り出すなど、「減築」という考え方を提案している。耐震改修と積極的に小さく住むという提案を合理的に実現した事例として高く評価し、優秀賞とした。; 工法の種類　透過性を付与した耐力壁による補強工法; 本補強事例は、木格子に透過性のあるアクリル版を組み合わせた耐震要素などを、既存住宅の比較的使用頻度の低い開口部や引き違い戸部分に組み込む工法である。建物の使用勝手をほとんど阻害しないこと、採光も確保できる点が高く評価された。更に、使用材料は一般流通品を使っているので比較的安く補強ができる。但し、応募の補強事例では、1階と2階の補強溝面が平面的にずれているので、2階床面での水平力の移行の確保が肝要となる。
【アイデア賞】: 工法の種類　外挿補強フレーム工法; この工法は、木造軸組工法や社寺建築に、室内空間の変更を一切伴わないで耐震補強を施すことができる。建物の外側に、アースドリル工法で鉄骨柱根巻きコンクリート基礎を新設し、その鉄骨柱でフレームを組んで、既存建物の梁に接合する。難しい施工技術は不要で、経済的である。補強フレームを利用した外壁を設けることにより、壁の断熱効果がよくなるという副次効果もある。アイデアに富む提案である。
【佳作】: 工法の種類　オイルダンパと接続特殊パネルによる工法（GHハイブリッド制震工法）; この工法は、オイルダンパによる制震装置と接続特殊パネルおよびスタッド骨組等で構成される制震パネルを内壁あるいは外壁に適用するものである。居ながら補強が可能であり、一ヵ所当たりの補強効果が高いため、比較的少ない補強箇所で所定の耐震性能を確保することができ、低価格で施工可能な工法である。また、制震部材による応答制御といった新しい耐震補強工法のアイデアを取り入れたものであり、佳作にふさわしい工法である。